心のよりどころを探して：現代社会における居場所づくりの重要性
居場所づくりは、個人が安心して過ごせる環境を提供するだけでなく、精神的健康や社会的つながりを強化するために不可欠な要素です。
現代社会において、居場所づくりはますます重要な役割を果たしており、私たちはその価値を理解し、積極的に推進していく必要があります。
居場所づくりの意義
①精神的健康の向上
居場所があることは、ストレスや孤独感を軽減し、精神的な健康を促進します。安心できる場所で過ごすことにより、個人は心の安定を保つことができます。
②社会的つながりの強化
個々に居場所があることで、人々が互いに交流し、支え合う場を提供します。これにより、社会的なつながりが強化され、コミュニティ全体の絆が深まります。
③孤立の防止
孤立感を感じている人々にとって居場所は避難所となります。特に、都市化やデジタル化が進む現代社会において、居場所は孤立を防ぐための重要な拠点となります。
④個人の成長と自己実現の場
居場所は、個人が自分自身を見つめ直し、成長するための機会を提供します。自己表現や学びの場として、個人の自己実現をサポートします。
現代社会における居場所の喪失の原因
①孤独感と孤立の増加
厚生労働省の調査によると、2019年の段階で「孤独を感じる」と答えた人は全体の約40%を占めています。また、特に高齢者の孤独感が深刻で、65歳以上の約30%が「頻繁に孤独を感じる」「近所に相談できる人がいない」と回答しています。
アメリカでも同様の調査をおこなっており、Cignaの2018年の調査では、アメリカの成人の46%が「しばしば、または常に孤独を感じる」と報告しています。この孤独感は、特に若年層で顕著であり、Z世代（18歳から22歳）の約50%が「孤独を感じる」と答えています。
②デジタル化と社会的つながりの希薄化
総務省のデータによると、2020年の段階で日本の成人のスマートフォン普及率は83.2%に達しており、特に10代から20代の若年層での利用率は95%以上です。
また、アメリカのPew Research Centerの2021年の調査では、成人の約72%がソーシャルメディアを使用しており、特に若年層での利用が顕著です。しかし、過度なソーシャルメディアの使用が孤独感や不安感を増幅させるという研究結果も多く報告されています。
SNSの普及や発展が、アメリカの研究結果のような課題をもっている部分もありますが、反面SNS利用者が多い時代だからこそ、それを用いた対策も必要なのではと感じます。
③都市化とコミュニティの希薄化
国連の報告によると、2018年には世界人口の55%が都市部に住んでおり、2050年までにその割合は68%に達すると予測されています。この急速な都市化がコミュニティの崩壊や社会的つながりの希薄化を招いています。
日本では、総務省のデータによると、2020年には日本の人口の約92%が都市部に集中しており、特に東京、大阪、名古屋の三大都市圏への集中が顕著にでているとされています。
また、内閣府の調査によると、近年地域コミュニティ活動への参加率が低下しており、2019年の調査では約60%の人々が「地域活動に参加していない」と回答しています。
このようなデータからも改めて都市化や地域コミュニティへの参加率の低下が結果的に現代社会における居場所の喪失に繋がっていることがわかります。
居場所づくりの成功例
①コミュニティカフェとその役割
コミュニティカフェは、地域の人々が気軽に集まり、交流を深める場として設けられたカフェのことです。これらのカフェは、単なる飲食の場ではなく、地域コミュニティの活性化や孤立の解消を目的としています。
具体的な例：日本の「カフェ・デ・モンク」
概要：宮城県石巻市にある「カフェ・デ・モンク」は、東日本大震災後に地域住民の心のケアとコミュニティの再生を目指して設立されました。
特徴：
• 被災者が集まり、互いの経験を共有する場として機能。
• ボランティア活動の拠点として、多くの支援者が集う場所となっています。
• 震災の傷を癒すためのワークショップやカウンセリングセッションも開催
成果：地域住民の心のケアに貢献し、孤立感を軽減。新たなコミュニティが形成され、地域の絆が強化されました。
②地域コミュニティの復活
地域コミュニティの復活は、近隣住民が連携し、共に支え合うネットワークを再構築する取り組みを指します。
具体的な例：イギリスの「エデンプロジェクト」
概要：「エデンプロジェクト」は、コーンウォールにある巨大なバイオームを持つ植物園で、環境教育と地域コミュニティの活性化を目指しています。
特徴：
• 地元住民が参加する多種多様なワークショップやイベントを開催。
• 環境保護活動と連携し、持続可能なコミュニティの構築を推進。
• ソーシャルプレスクライビング（医療従事者が患者に地域活動への参加を勧める処方）を導入し、地域の健康増進に貢献。
成果：地域住民の健康やウェルビーイングが向上し、コミュニティの一体感が強化されました。エデンプロジェクトは地域社会のモデルケースとなり、他の地域にも影響を与えました。
③オンラインコミュニティの可能性
インターネットを利用したオンラインコミュニティは、物理的な距離を超えて人々をつなげる新たな居場所の形です。
具体的な例：アメリカの「Nextdoor」
概要：「Nextdoor」は、近隣住民が交流し、情報を共有するためのソーシャルネットワーキングサービスです。
特徴：
• 住民が地域のニュース、イベント、推薦サービスなどを共有できるプラットフォームを提供。
• 防犯情報の共有や災害時の支援活動に活用されることも多い。
• 地域の問題解決や協力活動を促進するツールとして機能。
成果：「Nextdoor」は多くの地域で広まり、近隣住民同士のつながりを強化しました。コミュニティの結束が強まり、実生活での助け合いが増えたとの報告もあります。
近年、日本でもSNSを用いて見守りサービスやオンラインスクールなどが、社会的な繋がりを維持するため、社会問題の一助のためにサービスを展開しています。
④自治体のサポートによる成功例
多くの自治体は、居場所づくりを支援するための様々なプロジェクトを実施しています。
具体的な例：日本の「街かどデイハウス」
概要：「街かどデイハウス」は、兵庫県宝塚市が高齢者の居場所づくりを目的として設置した地域拠点です。
特徴：
• 高齢者が自由に立ち寄り、交流や活動を楽しめる空間を提供。
• ボランティアスタッフが運営を支え、多様なプログラムを実施（手芸教室、健康体操、カラオケなど）。
• 高齢者の孤立防止や認知症予防を目的としたサポートも充実。
成果：「街かどデイハウス」は高齢者の生きがいや健康維持に寄与し、地域の中での居場所として機能しています。自治体のサポートを受けたことで、継続的かつ安定的な運営が可能となりました。
⑤学校を活用した居場所づくり
学校は、地域社会の中で子どもたちだけでなく、全世代が交流する場としても機能します。
具体的な例：フィンランドの「オープンスクール」
概要：フィンランドのオープンスクールは、学校の施設を地域住民に開放し、教育とコミュニティの融合を図る取り組みです。
特徴：
• 放課後や週末に学校施設を地域住民が利用できるようにし、様々な活動を展開。
• 学校と地域が連携し、子どもから高齢者までが参加できるプログラムを実施（スポーツ、文化活動、学習支援など）。
• 学校のリソースを有効活用し、地域全体の居場所として機能。
成果：地域住民の交流が深まり、学校がコミュニティの中心的存在となることで、全世代が共に過ごせる居場所が形成されました。フィンランドの教育システムと地域社会の結束が強化されています。
まとめ 〜私たちにできること〜
居場所づくりにおいて、私たち一人一人が果たす役割は非常に重要です。
以下に、個人が実践できる具体的な取り組みを紹介します。
⑴ボランティア活動への参加
• 地域イベントへの参加：
地域のイベントやワークショップに参加し、他の住民と交流を深める。
• サポート活動：
高齢者や障害者、子供たちのサポートを行うボランティア活動に参加する。これにより、地域全体の結束力が高まります。
⑵コミュニティスペースの利用
• 利用者として：
地域のコミュニティスペースを積極的に利用し、他の利用者との交流を楽しむ。
• 提供者として：
自宅や職場のスペースを開放し、コミュニティ活動の場を提供する。
⑶意見を発信する
• フィードバックを提供：
地域の居場所づくりの取り組みに対して、積極的に意見やアイデアを提供する。
• 地域会議に参加：
地域の問題解決やイベント企画のための会議に参加し、自分の意見を発言する。
⑷教育と啓発活動
• 教育プログラムの実施：
多文化共生やインクルーシブな社会について学べる教育プログラムを企画する。
• 情報発信：
SNSやブログを通じて、居場所づくりの重要性や具体的な取り組みについて情報発信する。
など
そして、上記のような活動をすることはもちろんですが、居場所を求めている状況下にいる人は、確かな繋がりを必要としています。
安心した繋がりは日々のコミュニケーションから生まれます。そして、コミュニケーションを取る上では「共感」が重要になってきます。
共感は、他者が理解し受け入れてくれるという心理的安心感を提供します。これにより、個人は安心して自己表現ができるようになります。
また、共感を通じて他者の気持ちや状況を理解することで、深い信頼関係を築くことができます。
このような共感は誰もができ、その結果1人の繋がりを確保することができます。
居場所づくりは、個人の行動や地域の取り組みだけでなく、共感とつながりの構築を通じて実現されます。
私たち一人一人が積極的に関わり、他者とのつながりを大切にすることで、より強固で支え合えるコミュニティを形成することができます。
共感とつながりは、居場所を単なる物理的な空間から、心の拠り所となる温かいコミュニティへと昇華させる鍵となります。
そして、その発展した先に持続可能な社会が待っているのではないでしょうか。
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