認知症ガイドライン:実態と包括的な理解

認知症は、高齢化社会において急速に増加している疾患です。

世界保健機関(WHO)によると、世界中で約5,000万人が認知症を患っており、毎年約1,000万件の新たな症例が報告されています。

日本においても、高齢化の進行に伴い認知症患者の数は増加の一途をたどっています。

厚生労働省のデータによれば、2020年時点で日本の65歳以上の約16.7%が認知症を患っていると推定されています。

認知症の種類とその割合

認知症にはいくつかの主要なタイプがあり、それぞれの有病率は以下のようになっています

①アルツハイマー型認知症:

全認知症患者の約60-70%を占めます。

記憶障害から始まり、徐々に全体的な認知機能が低下します。

②血管性認知症:

全体の約20%。脳血管障害(脳卒中など)が原因となり、発症します。

③レビー小体型認知症:

約10-15%。幻視やパーキンソン症状が特徴です。

④前頭側頭型認知症:

約5%。行動や人格の変化が主な症状です。

認知症のリスク要因

認知症の発症には複数のリスク要因が関与しています。主要な要因として以下が挙げられます。

●年齢:加齢が最大のリスク要因であり、年齢が高くなるほど発症率が増加します。

○遺伝:家族歴や特定の遺伝子変異がリスクを高めます。

⚫︎ライフスタイル:喫煙、高血圧、糖尿病、肥満、運動不足などがリスクを増大させます。

○教育:低い教育水準がリスク要因とされています。教育による認知予備力の向上が保護因子となります。

経済的影響

認知症は個人や家庭だけでなく、社会全体に大きな経済的負担をもたらします。

2020年のデータによると、世界全体での認知症関連の医療費や介護費用は約1兆ドルに達するとされています。

日本においても、認知症による経済的負担は年間14兆円を超えると見積もられています。

早期診断と介入の重要性

認知症の早期診断と介入は、患者の生活の質を向上させ、介護負担を軽減するために極めて重要です。

早期診断により、以下の利点があります。

①治療選択肢の拡大:進行を遅らせる薬物療法や非薬物療法が適用可能。

②生活計画の策定:患者と家族が将来の生活設計や法的手続きを早期に行うことができる。

③介護支援の開始:必要な介護サービスや社会的支援を早期に導入できる。

認知症予防のための生活習慣

・適度な運動:有酸素運動が脳の健康に良い影響を与える。

・知的活動:読書やパズルなどの認知活動がリスク低減に寄与。

若い世代でもボードゲームなどが流行っているため、世代を超えた交流にも繋がる可能性が含まれています。

・社会的活動:孤立を避け、社会的つながりを保つことが重要。

近年ではLINEアプリを用いたり、カメラ・センサー、宅配型などの見守りサービスが普及しています。中でもLINEアプリでは手軽なチャット機能もついているため、確かなコミュニケーションをとることが可能です。(サービスによる)

・バランスの取れた食事:地中海式食事やDASH食事法が推奨される。

【補足】

(1)地中海式食事

地中海式食事は、ギリシャ、イタリア、スペインなどの地中海沿岸地域の伝統的な食生活に基づいています。研究により、心血管疾患のリスク低減や認知機能の維持に有効であることが示されています。

特徴

①豊富な野菜と果物:
• 毎日の食事に多種類の野菜と果物を取り入れる。
• 季節の新鮮なものを中心に、彩り豊かな食材を選ぶ。

②全粒穀物:
• パン、パスタ、米などの穀物は全粒のものを選ぶ。
• 食物繊維が豊富で、消化に良い。

③健康的な脂肪:
• オリーブオイルが主要な脂肪源。
• 飽和脂肪酸の摂取を抑え、オリーブオイルやナッツ、種子類からの不飽和脂肪酸を多く摂取。

④魚とシーフード:
• 魚やシーフードを週に2回以上摂取。
• 特にサーモン、マグロ、イワシなどの脂肪が豊富な魚は、オメガ3脂肪酸が豊富。

⑤乳製品とプロテイン:
• ヨーグルトやチーズなどの乳製品を適度に摂取。
• 豆類、ナッツ、種子も重要なタンパク源。

⑥赤身の肉の制限:
• 赤身の肉や加工肉の摂取を控え、代わりに魚や鶏肉を選ぶ。

⑦ワインの適度な摂取:
• 赤ワインを適度に摂取(1日1~2杯まで)。
• 適度なアルコール摂取が健康に良い影響を与えるとされる。

⑵DASH食事法

DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食事法は、高血圧を予防・改善するためにアメリカ国立衛生研究所(NIH)によって開発された食事法です。

心血管の健康改善や血圧の低下に効果があるとされています。

特徴

①野菜と果物の豊富な摂取:
• 毎日、豊富な野菜と果物を摂取。
• 各食事で複数の種類を取り入れる。

②低脂肪または無脂肪の乳製品:
• ヨーグルト、ミルク、チーズなどは低脂肪または無脂肪のものを選ぶ。

③全粒穀物:
• 全粒パン、全粒パスタ、玄米などを摂取。
• 食物繊維が豊富で血糖値の管理に役立つ。

④脂肪の種類と量:
• 飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の摂取を制限。
• ナッツや種子、オリーブオイル、アボカドなどの健康的な脂肪を摂取。

⑤魚と家禽:
• 魚や鶏肉を定期的に摂取。
• 赤身の肉や加工肉は控える。

⑥ナトリウムの制限:
• 1日のナトリウム摂取量を2,300mg未満に抑える。
• 高血圧のリスクを減らすためには、1,500mg以下を目指す。

⑦甘い飲み物とお菓子の制限:
• 砂糖を多く含む飲料やお菓子の摂取を控える。

認知症の方への基本的な姿勢

⑴驚かせない ⑵急がせない ⑶自尊心を傷つけない

●具体的な対応の7つのポイント●

①まずは見守る!

認知症の方に気付いたら、本人や周囲の方に気付かれないよう、一定の距離を保ち、さりげなく様子を見守る。

※近づいたり、凝視するのはよくない。

②余裕をもった対応

フォローする側が困惑や焦りを感じていると、相手にも伝わって動揺させてしまうため、自然体で対応することが大切です。

③声をかける時は1人

複数で取り囲むと恐怖心をあおりやすいため、極力1人で声をかける。

④後ろから声をかけない

一定の距離で相手の視野に入ったところで声をかける。

「何かお困りですか」「お手伝いしましょうか」「どうなさいました?」「こちらでゆっくりどうぞ」など。

( 参考:全国キャラバン・メイト連絡協議会 認知症サポーター養成講座標準教材「認知症を学び 地域で支えよう」)

最新の研究動向と将来展望

認知症の研究は進化を続けており、新しい治療法や予防策の開発が期待されています。最近の研究では、以下のような進展があります。

• バイオマーカーの発見:血液検査や脳画像で早期診断が可能になる技術。

• 遺伝子治療:特定の遺伝子をターゲットにした治療法の開発。

• 新薬の開発:アルツハイマー病の進行を抑える新しい薬剤の臨床試験が進行中。

まとめ

認知症は個人、家族、社会に大きな影響を及ぼす疾患です。

統計データと最新の研究に基づき、早期診断と介入、予防策の実践が重要です。

社会全体での支援と啓発活動を通じて、認知症患者とその家族の生活の質向上を目指すことが求められます。

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