教員の質向上のために

「教育の質についての考察【こちら】」では、大きな意味での教育の質について考えを述べましたが、その「教育の質」指標【こちら】の細かな部分について解説をしていきたいと思います。

項目の中で「授業」ではなく、主に「日々の指導支援や業務」に関わるものについて、教員の質向上のために必要だと考えていることを具体的にまとめていきます。

⓪人間性・姿勢 、①環境づくり 、②現状把握 、③信頼関係 、④生徒指導 、⑤教育言葉 、⑥その他 で大きく分けてみます。

0.人間性・姿勢

生徒の将来に関心があるか、清潔感があるか、信頼できるか、明朗で安心感があるか、魅力的で自ら輝き、使命・情熱・知識・技術があるか、子どもの状況(集団の状況)を常に把握し(把握しようと努力し)、適切な手を打っているか、常態・慣例・ルール・マニュアルに縛られ思考を停止していないか、横柄で感情的でないか、子どもや保護者に迎合せず正対しているか

まず、0番目にしたのは、教員としての前提になる項目です。

学生時代を過ごした人であれば、意外に多く感じることがあったのではないかと思いますが、「こんな大人にはなりたくないなぁ」という反面教師的な教員のことは除外して考えます。

もちろん、反面を見ることによって子どもは「こうはなりたくない」という学びを得るかもしれませんが、それは受け手の子ども側がプラスに転じて物事を考えられていることですので、ここでいう目指すべき像とは別次元のこととします。そんな方がこのような記事を読むとは思いませんが・・・

さて、教員の仕事は仕事として、そこに従事する人の人間性には以上のことが重要だと思います。

冒頭の「生徒の将来に関心があるか」が最も重要ですが、日々の業務をこなすことに時間をとられ、個々の生徒の現状や適性、伸びしろを見出し、将来の進路あるいは活路を引き出し導くことを忘れがちになってしまっているような悲しい現状を見聞きすることもしばしばです。

全ての教育活動を実践する側が、信念をもち、どういったねらいをもって言葉や行動を選択しているのか、そのことを常に考えられているか(考えていけるか)どうかがスキル云々ではなく教員のベースだと思います。

1.環境づくり

恐怖がないか、声量・雑音レベルが不快でないか、笑いがあるか、安心して着席できるか(物理的・心理的)、空調・明るさは適切か、存在・個性・能力が認められているか、間違いが許容・活用されているか(恥をかかないか)、開始・終了の合図が明確で適切か、途中からでも歓迎されるか、不要な物がないか、壊れているものはないか、久々に授業を受ける生徒への配慮があるか

教育の中で、結果や成果に影響を及ぼすものとして、環境要因は非常に大きいです。

子どもの過ごす環境は、そのまま育つ環境であり学ぶ環境です。

人により、空間の感じ方は異なりますが、最低でも存在が認められる環境がなければなりません。

例えば、特定の能力や性格、存在や考え方だけ排除するような風潮があったりするのは論外です。子どもの言動は時に残酷です。空気を感じて、同調圧力やイジメに発展することもあります。

一定の集団は、何かが起こったときに、あるいは持続させるときに、それを自治的に律する力を持たなければ崩壊します。特に日本人は「空気を読む」という非常にあいまいで正解のないものや「多数決」を好む傾向もあるので難しい面もあります。

その環境の源になるのは、まさに教員の姿勢や子どもたちの生活空間になります。

まずは、個として、集団として、きちんとした学習環境を構築していかなくてはなりません。

2.現状把握

新入生の有無、人数確認(点呼)、子どもの緊張度、個の得手不得手、特別な配慮(NGワード、身体、家族構成、出席状況)の有無、習熟度、躓き理解、個の目標や情緒、納得確認(頷き、得点、答えあわせ)、健康観察ができているか

現状を正しく見極めたうえで、そこから改良、改善、向上、好転することが成長であり、評価すべきことです。

教科学習においても、人間関係においても、健康状態や各能力においても、現状を把握していない状況で教育活動はできません。

どこに問題・課題があるのか、困り感があるのか、不安があるのか、目標があるのか、質の高い教員ほど現状を知るための手法を数多く駆使しています。

テストやアンケート、家族構成、面談カード、指導支援シート(カルテ)だけでなく、実際の子どもたちの休み時間の過ごし方から流行っていること、友人関係の変化、服装容姿表情のちょっとした変化等、コミュニケーションや観察のなかでできるだけ多くの分野の現状を知り、教育活動や声掛けに活かすことが大切です。

3.信頼関係

見えない(見たくない)、聞こえない(聞きたくない)、わからない(やりたくない)を軽減しているか、教員に心の振れ幅が無いか、立ち位置(距離感・目線)的確か、言葉の選択(認知、肯定、的確)、声の調子、顔の表情、物理的に関わってくれる時間、センス、身だしなみ、和して同ぜずで迎合していないか

一口に信頼関係といっても、築くのは日々の積み重ね(足し算)であり、崩れるのは一瞬(引き算ではなく、×0の掛け算)です。ジェンガや積み木のようなものです。

信頼関係は好意ではありません。教員や大人、頼れる立場としての信頼を好意として認識し、犯罪かそれに準ずる不適切な教員が後をたたないのは非常に残念です。

尊敬や信頼を獲得することは、発言力や影響力、指導力に大きな効果をもたらす場合が多いです。子どもはよく大人を観察しています。だからこそ、打算的なものでなく自然体で行えるようにしなければなりません。

特定の生徒にだけ時間をかけている、呼び方や声のトーンに整合性がない、授業を受ける側への配慮がない、日々言っていることに矛盾が生じている、納得できる説明がない、子どもの状況を把握していない等、人と人としての関係性にヒビが入るようなことは禁物です。これは、⓪の項目で示した人間性と姿勢、次項で述べる生徒指導が大きなウェイトを占めるかと思います。

4.生徒指導(支援)

学業指導、進路指導、問題行動指導、適応指導、道徳・マナー指導、保健安全指導、余暇指導が段階別に繋がりを持ち計画的に行なえているか、偏っていないか

指導というと、怒ることをイメージする人も多いようですが、そうではありません。

より良い方向を指し示し、導くことをいいます。

また、支援は支え、応援することで子どもの状況に応じて強度を常に変えていかなければなりません。

指導と支援のバランスは、②の現状把握が正しく行われ、発達か獲得段階に応じて適切に行うことが重要です。

また、指導の中には「教えること」も入りますが、「気づかせること」の方が大切です。

答えのある指導もありますが、高い質の教員は正解のないものに対する指導ができることが特徴です。

最大の生徒指導は、進路指導であり、進学先や就職先を決めるだけでなく、将来の方向性や生き方指導をしていくことが教育の根幹です。

5.教育言葉

(信頼言葉)心をしずめ・あたため・なぐさめ・見守り・肯定し・感動を共有し・安心させる言葉をかけているか

(教え言葉)たしなめ、注意し、知識を導き、問題解決方法を伝え、社会貢献精神・世の中や生き方・未知の世界・新たな価値観を教える言葉をかけているか

(与え言葉)楽しく、元気を与え、認め、褒め、励まし、勇気ややる気を与える言葉をかけているか

教員として働く時間は、仕事としてとらえると身振り手振りや発言、行動もすべてスキルとしてみていくことが質の高い教員でありプロだと思います。

教育活動に関わる全ての言動が、意図的で計画的、継続的なものと一貫しているべきです。

特に教員の使う言葉を3つに分けた時、上記のようなもので構成されているのが理想と考えています。

ただし、どうしても言葉を発することが多いのが教員・・・子どもの言葉に耳を傾ける時間をより大切にしてほしいと思います。

6.その他

チームで対応することができているか、本物に触れさせているか、すべてを教えようとしていないかetc

教員といっても1人の能力や知識、経験には限界があります。どれだけ指導支援に自信を持っていたとしても自分一人の力に過信している限りは質の良い教員ではないのだと思います。

多様な関わりのなかで初めてわかること、気づくこともあります。その方が多いです。

例えば「看護師になりたい」と子どもが言ったときに、「看護師の具体的な仕事内容」「やりがいや大変さ」「就業形態」など、実際にその立場に立ったことがないものに対して、インターネットや本・聞いた話などの情報提供以上のことは教えられません

教えられること、伝えられること、見せてあげられること、体験させてあげられることを、一つの空間や個人だけで完結させて教育することはできません。

一人の子どもを、いろんな角度から観察し、いろんな人が関わり、その子が将来生きていく力を育てるという考え方を持てば、このような考え方も重要かと思います。

小難しく質の高い教員とは何か、教員の質向上のために必要かと思うものを挙げてみましたが、「基本は一生懸命」です。

きちんと子どものためを想う仕事ができる人は、質の良い教員

さらにこれまで述べたようなことを考え、磨いている人は質の高い教員なんだと思います。

現在、そして今後教員になる方々が、くれぐれも健康と家庭、自分自身も大事にしていただけるよう、子どもたちがそんな素晴らしい教員に出会えるよう願っています。

〜紹介〜

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