授業の質向上のために

「教育の質についての考察【こちら】」では、大きな意味での教育の質について考えを述べましたが、その「教育の質」指標【こちら】の細かな部分について解説をしていきたいと思います。

項目の中で「日々の指導支援や業務」ではなく、主に「授業」に関わるものについて、授業の質向上のために必要だと考えていることを具体的にまとめていきます。

まず、授業については、いくつか形式があるかと思います。

例えば日々の教科授業

イベントや状況・発達段階に応じた特別授業

学年を越えた集会などの合同授業 etc

本記事では、どのような授業においても共通する授業者が質の高い授業を実践するために留意すべき事項について触れていきます。

はじめに

授業者は、時間や人数、環境など限られた条件下の中で授業を行いますが、前提に「この人の話を聞いてみたい」「この授業の時間が現在や将来の自分にとって必要・有用なものだ」と、授業を受ける側に思われる人間性や専門性、姿勢や目的を伝えなければなりません。

それは、いわゆる「日々の信頼関係」や「導入(目的の伝達)」に他なりません。

そういった意味で、「授業」は始業時間前にすでに始まっていることを授業者は意識しなければならないと思います。

授業をする際に、継続した関係性や、カリキュラムがある場合がほとんどですので、下記の項目については可能な限り事前に確認をとっておくようにしましょう。

授業計画のチェック項目

①習熟度とその差の大小、②人数、③緊張度合い、④授業に対しての興味関心・姿勢、⑤特別な配慮が必要な子どもがいないか(身体、NGワード、家族構成、出席状況、グループワーク等)、⑥授業場所の環境(物品、広さ、避難経路等)、⑦子どもが準備するもの(教科書や服装など指定するもの)

授業中の教員の言動、教材は全て、意図的、計画的なものです。

それを構築していく上で上記の情報はあればあるだけ良いといえます。

授業は生き物や雲の動きのようなもので、必ず全く同じ反応で、同じ効果を出す授業になることはありません。

例えば、同じ授業内容を複数のクラスで実施したとしても、受け手側の集団が違えば、授業のコントロールの仕方を変えていくことは当然です。

教員の中には、子どもの反応や状況に関わらず、まるで録音されたように言葉を発し、決まりきった板書をし、時間になったらハイ終了!という授業を展開する人も見受けますが、授業の質としては最低です。

動画学習との違い

ここで、話は少しそれますが、ここ数年でほとんどの教科学習は動画で見られる(しかも無料で)ようになってきました。

授業のプロほど非常にわかりやすく、洗練された言葉で解説を行なっており、知的学習においては大変有効です。上記で挙げた「録音教員」の方の授業を聞くのであれば、このような動画を見た方が効率的な時代です。

敢えてこのような学習動画については、「授業」という言葉は使いませんでした。

本記事でいう「授業」は対面またはオンラインでリアルタイムに行われるまさに生中継のものであり、その時その場で、そこにいる人にしか提供できない付加価値の高い時間と捉えています。

「授業」は食べ物で例えると、加工食品や冷凍食品、保存食品ではなく、新鮮な生ものを提供するものです。

好きなアーティストであれば、CDを聞く、DVDを見ることも楽しいですが、LIVEでの特別感、得られるものは一味違います。その意味で授業はLIVEです。

だからこそ、冒頭で述べた「この人の話を聞いてみたい」「この授業の時間が現在や将来の自分にとって必要・有用なものだ」と授業の受け手側に全力で伝える(伝わる)ことが、授業者が授業をする前提に必要な使命なのだと思います。

では、質の高い授業を展開するために、授業ではどのようなことを意識的、意図的に気を付けて準備・実践していけばよいのでしょうか?

①プリント・配布方法 、②板書 、③指名・呼名 、④指示方法 、⑤発問・質問 、⑥発表方法 、⑦活用 、⑧活動種類 、⑨机間指導支援 、⑩その他

以上の10項目についてチェックすべきものを挙げていきます。

プリント・配布方法

角度、色彩(濃さ)、余白、紙の大きさ、フォント、字の大きさ、字・絵・写真の量が適切か、氏名・日付欄・No等の記載あるか、空欄の量、管理・活用・評価方法を伝えたか、フィードバック(採点・コメント・評価)しているか、なぜプリントなのか(時短、配慮、まとめ、練習など利用した理由が明確か)

板書

量、内容、丁寧さ、色使い、大きさが適切か、短縮が可能か、余白は意図的か、日付・本時の学習題材が記述されているか、不要な記述・掲示がされていないか、消す回数は最少か

指名・呼名、指示方法

挙手(自主)、選択指名(教員)、生徒間指名、事前の声掛け、規則的(縦横時計回り)、ランダム(緊張感)、偏りないか、無意味・無計画な指名がないか、名前で呼んでいるか、苗字・あだ名の格差がないか、回答に対して真摯に向き合ったか

具体的で短く、的確な内容・タイミング(配布・提示の前後)に洗練されているか、追加指示はないか。主語(誰が)、直接目的語(何を)、間接目的語(~に)、述語(どうする・どうした)、時間(いつ・いつまでに)、場所(どこで)、条件(誰と、禁止事項、前提確認、次の展開への繋ぎ)を明確にしているか

発問・質問

発問(発する側が解答をわかっていてする問い)の順序、正解のない発問、ペース(個数)、難易度などが最適で意図的か。質問(発する側にも解答が具体的には予想できない問い)を適切に活用したか、アドリブ力・瞬発力を備えているか、授業内容からズレが生じていないか

発表と活用

挙手、提出、代読、代表板書、指名or自由発言、整合性による自己肯定の維持・向上ができているか、できる限り多くの生徒から意見・答えを吸収・集約する工夫をしたか

資料、身近な話題、ニュース、社会情勢、子どもの発言、掲示作成で活用したか、手法や意見の偏りを予防したか、配慮はあるか、時間コントロール(導入・展開・まとめ)が機能しているか、モラル・LGBT等への配慮した内容か

活動の種類

聞く、書く、見る、記録する、調べる、話す、話し合う、考える、推理する、黙読、音読、群読、唇読、共書き、覚える、体験する、創造する、感じる(5感利用)、相談する、教える、気づく、これらの多様性と時間の保証、意図的な組み立てがあるか、生徒の受け身の活動が増えていないか

机間指導支援

指導・巡視・支援の区別をして臨んでいるか、持ち物、服装、理解度把握、発表に繋げられるか、回数は適切か、現況把握に繋げているか、平等性があるか

その他

可視化:アンケート、数値化、数量化、作成、視聴、実験などを通してイメージできたか、実物・本物にふれたか

授業形式:子どもが参加しているか、主体的対話的か、講義型かバトミントン型かバレーボール型か意識し展開しているか

課題:能力に応じた課題の準備をしていたか、宿題は何のために課しているか、内容・量・頻度は適切か、評価したか

姿勢:目的・ねらいを意識して学ぶ(生きる力)orやりたい・楽しいから学ぶ(生きようとする力)を提供する工夫をしたか

獲得:知識・情緒・意欲の獲得があったか、達成感、向上心が生まれたか、記録、理解、可能なことが増え、活用されたか

評価:絶対評価、相対評価、到達度評価、ゴールフリー評価(あえて評価しない)を理解し、使い分けているか、「平等」が活躍・成長の場を減少させていないか、全ての活動に目標と評価があるか、達成したか、検証・分析したか

時間:授業の開始・終了時間を厳守しているか、印刷・忘れ物・緊急性の低い応対で教室を出ていないか(事前準備)

礼儀:子どもに正対しているか、迎合していないか、マナー指導、個性を尊重しているか、あいさつが交わされているか

以上、質の高い授業を準備・実践・継続していくのは非常に大変なことです。

授業のコマが多く、スパンが短いほど、授業の質は下がる傾向はあります。

しかし、子どもにとっては成長をするための重要な時間と捉えると、できる限り質の高い授業を提供することが求められています。

世の中で、「授業」を行なっている教員の方々が更なる研鑽や自己評価のための一助になれば幸いです。

私も質の高い授業ができるよう励んでいきます。

ご意見、ご感想、ご指導ありましたらお問い合わせフォームからご連絡ください。

最後に、本記事の内容をコンパクトにまとめた、私が授業前に確認する文面を載せて、終わりにしたいと思います。

授業中に教案を見ずに、事前準備をして、対話的に耳を傾け、少しずつ、丁寧な言葉遣いで、品格を保って、基礎基本をしっかり、個と集団に目を向け、状況に応じて時に臨機応変に、忙しさを出さずに、正しく具体的に、感情的にならずに、豊かな人間性で自ら輝き、確かな指導力を兼ね備え、情熱と使命を持ち、研鑽(理論・実践・検証)を重ね、教育の目的からブレずに、子どものために授業にあたれているか

最後まで見ていただき、ありがとうございました。

〜紹介〜

受け身の多い授業だけでなく、日々多くのものから学ぶことができます。

学んだこと、やったこと、これをアウトプットして誰かに反応をもらえることは承認欲求にも繋がります。年代に関わらず日々、あなたを応援するオンライン担任「ワライグマLINE」も試してみてはいかがでしょうか♪

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です